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行きずりの恋の結末は… [臨書/百人一首]

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※クリックで拡大します^^

【百人一首-86/左】
嘆けとて 月やはものを思はする
かこち顔なる 我が涙かな
西行法師

【本文訳】
嘆けと氐 月や八もの遠思者春累
かこ知顔奈る わ可な三堂可那

【内容訳】
「嘆け」と言って、月が私に物思いをさせるのだろうか?
いや、そうではない。
恋のせいだというのに、まるで月のせいだとばかりに流れる私の涙なのだよ。

【百人一首-87/中】
村雨の 露もまだ干ぬまきの葉に
霧立ちのぼる 秋の夕暮
寂蓮法師

【本文訳】
村雨の露毛ま多飛ぬま起の葉二
霧立ち能奉留 秋の夕暮

【内容訳】
にわか雨が通り過ぎ、その滴もまだ乾かないうちに
杉や檜の葉の茂りから、早くも霧が立ちのぼっている秋の夕暮れであるよ。

【百人一首-88/右】
難波江の 蘆のかりねの一夜ゆゑ
みをつくしてや 恋ひわたるべき
皇嘉門院別当(こうかもんいんのべっとう)

【本文訳】
難波江の あし能可利年農一夜ゆゑ
身越つくしてや 恋和多る邊支

【内容訳】
難波の入り江の芦を刈った根っこ(刈り根)の一節(ひとよ)のような
たった一夜(ひとよ)だけの短い仮寝(かりね)のために
澪標(みおつくし)のようにこの身を尽くして恋いこがれ続けることになるのでしょうか。


引き続き百人一首です^^
今回は恋の歌二首と情景を詠った一首です。
まず86の西行法師の歌。
西行法師は月と桜を愛した人で、他にも多くの月の歌を詠んでいるそうです。
昔から、月には色々な想いを感じる人が多かったのですね…。
この歌も、月を見て恋の悩みが一層高まる気持ちを表しています。
見ているだけで何だか泣けてくる…そんな不思議な力が月には宿っているようですね^^

真ん中の87の歌はとても美しく幻想的な風景を思わせる歌です。
村雨というのは秋のにわか雨の事で、日本には古くから雨にまつわる言葉というのがたくさんあるんですね。
雨が降った後の木立などからもやが立ち、なんとも幻想的な雰囲気になる事がありますが
この歌はそんな情景を詠った歌と思われます。
確かに、雨上がりに幻想的な風景に出逢う事って多い様な気がしますね。
普段雨をよく思わない様な傾向にありますが^^;
日本の美しい風景の一つとして見てみれば、大切にしておきたいシーンの一つかもしれません^^

最後の88の歌は掛詞がいくつか使われた歌になっています。
…一夜限りの行きずりの人を恋しく思ってしまう気持ちを詠った、何とも切ない歌^^;
人との関係は何度も逢って話をして、うち解け合って段々に築いていくものと思いますが
それとは裏腹に、たった一度きりの事で、相手がどんな人かもわからぬうちに何か感じるものがあって、
その後も想い続けてしまう…なんて事が起こるのも、また人間の不思議な所でもあります。
人の気持ちって本当に自分ではどうにも出来ない時があるから困ったものですね^^;
相手が同じように想ってくれている場合はいいですが…多分こういうシュチュエーションの場合
それはかなり望み薄な感じがします^^;
お互いの住んでいる世界が違う場合だってある…そんな時はきっと哀しい結末が多いのでしょうね…。
この歌の時代には遊女が多くいたそうで、そんな女たちの立場から詠んだ歌とも言われていますが…
こんな経験、したことある方ってもしかして結構いらっしゃるのかしら?^m^

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コメント 8

風光

詠みながら場面を想像しますね。
言葉・文字の連なりから自分のこれまでを対比させてみたりして・・・・。
しかし恋の歌二首は対比させる経験も無く、ただ若干の憧れは有るかな?

五木寛之がこんな事を書いていました。
夫婦のあり方・・・熱い、燃えるような恋愛の中で、お互いをずっと生涯の恋人として愛し続ける事もあるでしょうが、仏教で愛についてこう教えています。
「愛から生まれるもの、それは執着である」
執着や欲望は、煩悩として人を苦しめます。その苦しみから人間は抜け出さなくてはならない。
穏やかで、透明で、永続的で覚悟の定まった人間関係というものを仏教の考え方は暗示していると思うのです。
どれだけ早く、結婚前の恋愛感情から、お互いを理解し尊重できるヒューマンな友情に切り替え、成長していけるか・・・夫婦の関係はこの点につきそうです。

的外れな長い文になりましたが、そんな事を思い出しました。
by 風光 (2010-11-20 09:26) 

つるぎ

最後の追い上げで三枚ずつアップするんですね!
よくま~短期間で三枚も書けますね~仮名の作品は難しいイメージがあるのに追い込まれているからか頑張ってますね。
月を見ていて読んだ歌ですか、日本人ほど月を愛でる人は居ませんよね。そう言えば今日は満月ではないですかね?
by つるぎ (2010-11-20 10:52) 

海月シド

★風光さん
色んな歌がありますが、どれも想像させるような表現だったり
また自分と対比させたり出来るようなものも多いですよね^^
憧れっていうのもあるのかな…そんな場合もありますね^^

夫婦のあり方もいろんなカタチがあるかと思います。
人に対しての愛情もそうですが、
何に対しても想いが強すぎてしまうとそこに執着が生まれやすくなりますね^^;
思うからこその執着なんだけれど…皮肉な事にそれが問題の引き金になってしまう事も多々あって…なかなか難しい所です^^;
仏教について、私は浅学なので詳しくはわかりませんが
執着は何より自分を苦しめる事になるって事は確かな事だと感じます。
そういう気持ちにうまく折り合いがつけられるようになると、
不思議な事に関係ないと思っていた事までがスムーズに運ぶ様になったり…
その結果、人間関係に於いても穏やかで平和な関係になれるのかな、とも思ったりします。
夫婦は特に、ずっと生活を共にしていく相手ですからね…
そういった折り合いをどこでつけていくか、これって結構重要な事かなと(笑)
まだ大した経験にもなっていませんが、この10年で感じてきた事の一つでもあります^^;

いつもありがとうございます^^


by 海月シド (2010-11-20 21:44) 

海月シド

★つるぎさん
う〜ん、3つずつって決めているわけではないんですが(笑)
とりあえず、少し遅れた分を取り戻そうと3つずつUPしてみました。
毎日UPしてる訳じゃないですからねぇ^^;

今日は満月だったんですね〜。
早速さきほど夜空をしばらく眺めてました^^
随分真上の方にあって…月の位置からも季節を感じますよね。
ず〜っと見てても飽きないなぁと思いながら見ていました。
月ってそんな魅力がありますよね♪
…寒さに負けたけどぉ(笑)
by 海月シド (2010-11-20 21:50) 

悠人

月の不思議な力…昔の人ならずとも魅了されますよね?

月の海まで見えるような…煌々とした冬の月が好きです。

「霧立ち上る秋の夕暮れ」
この景色は昔から子供ながらに…好きでした。

最後の句の話…艶っぽいですね?^^
ゆきずりの…ってのはないですが…伝えられず、そのまま失恋…なんてのは…
ありましたねぇ。。。

あの日に帰りたい…ユーミンの歌が頭をよぎりました。

by 悠人 (2010-11-20 22:19) 

海月シド

★悠人さん
今も昔も、月の魅力は変わらないんだな〜って、
こういう歌を見ると感じますね^^
冬の月…すっきりとしてホント海まで見えそうです♪

霧立ち上る秋の夕暮れ…、ここのフレーズというかこの一部分だけは
私も何だか子供の頃から頭にずっと残っていました。
上の句はあまり記憶になかったんですけれど(笑)
響きが美しいですよね〜。

伝えられない恋…ですか^^
それも何だか切ないけれど、思い出としては美しい方に入るのかな^^
みんな色んな想いを経験しながら今に至っているんですものね。
…そう思うとどんな想いも愛おしく感じてきたりします^^

by 海月シド (2010-11-22 00:02) 

宗流


こんばんは、海月さん♪
こちら京都はお昼からしとしと雨模様の一日でした。
でも今日は11月下旬にしては暖かで、今夜は静かな雨夜です^^
こういう雨の中だと、相合傘のお出かけもいいのになぁ^^*
…と思いましたが、今夜はほったらかしにされている宗流です。エ~ン。。

今日は三首も励まれてたのですね~!!
宗流、西行法師のこの歌大好きです♪
恋患いに嘆息し、月を見上げる…なんて経験があったかどうかも忘れてしまった
宗流ですが、月を見上げると、物言わぬ月の囁きが聞こえるように感じる時は
あるように思います。あれは月の声なのか、心の声なのか…どちらなんでしょうね^^ 
88の歌、こんなに切ない歌だったんですね。
人が人に惹かれるのは、言葉であったり雰囲気であったり、容姿や境遇、体温で
あったりと様々なもので、なおかつ構えてなくても気付けば惹かれていた…そんな
曖昧な恋だってあるのでしょうね…^^*
何となく、古の恋のお話というのはバッチリとYes or No に分かれるではなく
霞の裾のようにおぼろげな部分がまた魅力なのかなと思う宗流です^^

でも、ふと思ったのですが…
海月さんの書かれる書でかるたを作ったら、とても素敵でしょうね~^^


by 宗流 (2010-11-23 01:01) 

海月シド

★宗流さん
こんにちは^^お返事遅くなってごめんなさいね。
いつもありがとうございます^^
雨の京都…というのも風情がありますよね〜。
まさに俳句や短歌などにぴったりかな、なんて感じがします^^
相合傘のお出かけはならなかったみたいですけれど〜
静かな雨の夜、何となくまったりと一人で過ごす…なんていうのもたまにはいいですよね^^
今日あたりはそちらの方もお天気になってる頃でしょうか^^
こちらも今日は良いお天気に恵まれてすっきりとした一日を迎えております^^

物言わぬ月の囁き…そんな声が聞こえる様な感覚、わかります^^
自分の心の声がこだまして聞こえているのかもしれませんね。
何かあると不意に月を見上げたくなる…昔からそう言う気持ちって変わらないものなんですね。
88の歌にあるような想いはゆきずりの恋ならずとも感じる事があるかもしれませんね。
昨日まで友達だった人でさえ、ある日突然に見方が変わる…なんて事もあるでしょうし
人として惹かれるのか、それとも恋愛として惹かれているのか
その境界線があいまいな関係なんかもあるように思います。
自分の中でどこのラインでそれを決めているのか…自分の事ながらわからない時もあったりします(笑)
宗流さんの仰る通り、古の恋のお話は朧げな感じが似合う気がします^^
それが艶っぽくもあり、また何となく切なくもある…
そんな風に感じさせる理由の一つのかもしれませんね。

書でかるた…ですか〜^^そういうの作れたら、作る方も楽しそう〜♪
今度考えてみようかな^^*

by 海月シド (2010-11-24 11:44) 

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