會津八一というひと

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先日の新潟旅行の時に泊まった旅館の部屋に
立派な掛け軸が飾ってあったので写真に撮ったのを忘れてました＾＾；
どうやら、各部屋にそれぞれ違った掛け軸がかけてあるらしかったです。
旅館のメインの入口の所にも大きな書が飾ってあったのですが
どうにも写真を撮れる雰囲気じゃなかったので撮る事が出来ず…（ハイ、チキンです・笑）
掛け軸の文字は恐らく禅語の「松樹千年翠　（しょうじゅせんねんのみどり）」かと思われます。
どなたが書いたものかは、落款を見ても最後の「大道」しかわかりませんでした＾＾；
読める方、いらっしゃいます？（笑）

ちなみに松樹千年翠とは…
春には花、夏には新緑、秋には紅葉…と感覚的な美しさが目立って、
松のみどりが人の目をひくことは少ないけれど
寒風吹きすさぶ頃ともなれば、今まで目立たなかった松のみどりの万古不易の美しさを
改めて見直すことになるだろう。
うつろいやすい世の中の、うつろうもののみに目を奪われて、
常住不変の真理を見失うようなことがあってはならない…
そんな意味があるそうです。
昔から変わらないものの美しさ…確かにそういうものって当たり前になってしまって
ありがたみを忘れてしまうものかもしれませんね。


…それから、新潟で寄ってきた會津八一記念館について触れておこうと思います。
會津八一さんというのは私も名前を何となく聞いた事がある程度で
俳人なのだとばかり思っていましたが、書も書かれる方と聞いて興味が湧いたのです。
記念館で色々見て来て、英語の教師でもあり、俳人でもあり、美術関係の講義などもされていたとのこと。
多才な方だったのですね〜。
書に関しては、子供の頃は先生にヘタクソだと怒られたこともあったのだとか。
元々左利きだったことと、元来お手本通りに書く事を嫌がる性格がそんな事を招いていたみたいです。
新聞の活字をお手本に書の練習をしたそうで、その中で独自の世界を作り上げていったのでしょうね。
洗礼された美しい書ではないけれど、どこか味のある、人柄が伺えるような作品が多いと感じました。
それともう一つは、何枚もあったご本人の写真がほとんど着物を着て（当時は多分それが普通だったのでしょう）書を書いている風景もそんな姿で筆を持ってらしたのですが
昔実家で見た祖父の写真が同じ様に着物を着て、何となく立ち振る舞いに共通するものを感じて
それが一層何となく親近感を感じさせたと言っても良いかもしれません。
会った事のない祖父への想いがどこかにいつもあるのだと思います。

ーー記念館を後にして宿に着き、部屋でお抹茶を頂きながら一息ついていると、
相方さんが「ほらほら」と部屋に置いてあった新聞を私に見せました。
それは新潟日報という地方新聞で、新潟でしか多分見る機会がないと思うんですが
その題字を書いていたのがこの會津八一さんだったのです。
自分の頭の中は先程記念館で見てきた「八一」色になっていたので（笑）
この単なる偶然が何だかとても運命的なもののように思えてしまいました＾＾；

記念館の展示の中で、八一さんが仰っていた事の一つに印象的なのがありました。
書の必需品の一つ、墨についてを語っていたのですが…。
墨というのはピンキリで色んなお値段のものがあるんですが、
お高いものではほんのちいさなサイズのものでも数万円〜数十万とかするものもあります。
でも八一さんは「値段の高い物を良い墨だ良い墨だと言って、得意げに使っているような書家は
本物じゃない。値段の安いものでも試行錯誤して、研究して、それでも良い色合いを創り出して書く、
その追求こそが真の書家ではないのか」…と、まぁこの通り話していた訳ではないですが
そんな内容の話でした。
すごく私は納得というか、好感が持てたんですよね。
確かにホント、その通り！って思いました。
高いものは確かに値段なりの良いものではあると認めますが、高い物が良いのは当たり前ですよね。
そうではないものから、そう見えるものになるように研究していく、そこまでの苦悩というかそういうものが
その道で生きていく人にとっての醍醐味なのではないかと思ったりしました。
墨だけじゃなくて、紙も、筆も、道具という道具全てに言える事なのかも知れません。
私は単なる素人ですが、値段だけにとらわれた価値の判断だけはしていきたくないな。

…長くなっちゃいましたが＾＾；
今回の旅の中で得たもの、癒やしとかだけのことじゃなくて色々収穫がありました。
色んな事に目を向けていれば、本来思っていた事とは別の事にも色々繋がっていったりして、
思った以上の収穫があったりする時がありますね。
普段寝ぼけ眼でも（笑）心の中の目はしっかりと開けて、物を見ていなくちゃいけないって感じました。
それを続けて行くことで、自分の知らない自分に　もっと触れられる機会が増えるかもしれない。


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タグ：臨書 雁塔聖教序

コメント 8

「松樹千年翠」
意味を知って、なんだか気持ちが温かくなりました。＾＾*

ほにゃらら大道・・全く読めません。笑

心次第で、物の見方や捉え方が変わるんですよね、＾＾
その時々の自分に応じた"出会い"のように感じます＊
by Charm (2009-09-11 22:32) 

★Charmさん
文字を見ただけでは意味までなかなか伝わりにくいかと思いますが
意味がわかるとすぅ〜っと心に入ってくる言葉ってたくさんありますね＾＾
ほにゃらら大道…は読めなくて当然です〜（爆）あは＾＾；

何でも気持ちの持ち方次第、心次第ですよね。
色んな意味でプラスになっていくような考え方でいたいなぁといつも思います＾＾


by 海月シド (2009-09-12 23:08) 

よき体験をしてきたんですね。
それにしても確かに道具は高ければ良いって事は無いですよね、筆なんかは安くても書きやすければ得したなって思っちゃいますからね。
あっちなみに僕も・・・大道読めないです↓↓ボールペンで書いたかのような名前書きですよね
by つるぎ (2009-09-13 02:00) 

ほんと、普段色んな意味で視野を広くしておくと、様々な出会いを呼び寄せるものなんですね☆
そして、八一さんのお話、私もとても納得がいきました。
今しているハープもそうですけど、必ずしも自分の楽器がある人がいい演奏をするわけでもないですしね。
要は自分に与えられた環境や条件の中で、ベストが尽くせるかってことだと感じています。
by あき (2009-09-13 22:17) 

★つるぎさん
お高い道具は良くて当たり前なんですよね＾＾；
そりゃ〜できればそういうのを使ってみたいですけど（笑）
でも、何かを追求していくことって値段とは全く関係ないと思います。
自分に合っているのかどうか、そういうのも大事ですしね＾＾

…つるぎさんでも読めませんでしたかぁ〜＾＾；
どこかのお寺の住職さんかなにかが書かれたのかなと勝手に思ってるんですけれど…極細ですがちゃんと墨で書かれていたようです＾＾；
落款は読みやすく書こう！っと自分で思ってしまったのでした（笑）
by 海月シド (2009-09-13 23:20) 

★あきちゃん
視野が広いって、やっぱり何かにぶつかる可能性が広がるって事だし
それが自分にとって大事な事であれ、そうでないことであれ
そこからどうそれが発展していくかなんて自分自身でもわからなかったりするものですよね。
だから可能性は出来るだけたくさんあった方がイイって思うんです。

そうそう、あきちゃんの仰るように自分の許された環境の中でベストを尽くせるかどうかって事がとても重要ですよね。
そこから背伸びしたって仕方ないし…＾＾：
等身大で生きて行けなければ、何を追い求めても意味がない様な気がします。
そして、結局のところ、今の自分よりも何か高みを望むのであれば、じゃあその分頑張れよって話なんですよね（笑）
物事はやっぱり至ってシンプルなんだわ〜（笑）


by 海月シド (2009-09-13 23:26) 

海月さんの出会いに便乗して
いろいろ学ばせていただきました！ありがとうございました～＾＾
何でもないもの…と見過ごしてしまうようなものでも
見方によって、自分にとってかけがえのないものと気づくことってありますよね。
この世の中にはいろいろなものがあるけれど
何を、どのように切り取って見るか…でどんな人生になるかが決まってしまう。。
自分にとっての心の目、大事にしなくちゃ…と思いました！

by suiren (2009-09-14 00:31) 

★suirenさん
こちらこそ、マニアックな話にいつもお付き合いくださって（笑）
感謝してます＾＾ありがとうございます〜！

一番コワイのは、見えているはずなのに気がつかない事だって気がするんですよね。
自分の中で余裕がなかったりすると物事を一つの方向だけで見てしまったりするし、シンプルすぎる事だとよく見てないとわからないものもたくさんありますしね〜。
何をどのように切り取って見るか、また見える位置まで自分が動けるかどうか…ホントにそれって大事ですよね。
昨日はそんな事もとっても感じさせてもらった一日でした＾＾
ありがとうございました〜＾＾

by 海月シド (2009-09-14 00:49)