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今を語るものたち [臨書/百人一首]

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※クリックで拡大します^^

【百人一首-94/左】
み吉野の 山の秋風小夜ふけて
ふるさと寒く 衣うつなり
参議雅経(さんぎまさつね)

【本文訳】
三よし能ゝ やまの秋可世小夜不遣亭
ふる佐と寒具 衣宇川奈り

【内容訳】
奈良の吉野山に秋風が吹きわたり、夜がふけた。
かつての都は寒々とわびしく、衣を砧(きぬた)で叩く音が聞こえてくるよ。

【百人一首-95/右】
おほけなく 浮世の民におほふかな
わが立つ杣に 墨染めの袖
前大僧正慈円(さきのだいそうじょうじえん)

【本文訳】
おほ希奈く 憂幾よ乃民尓於奉布可那
王可多つ杣二 墨染のそ亭

【内容訳】
身の程もわきまえないことだが、
このつらい浮世を生きる民たちに覆いをかけてやろう。
この杣(比叡山)に住みはじめた僧の私が身につけている墨染めの袖で。


今回は珍しく二首とも恋以外の歌です^^
94はかつて栄えていた吉野が古び、今は衣を打つ音だけが響いている…と歌っています。
衣を打つのは布を柔らかくするためで、繊維が広がって暖かく着られたのだとか。
冬支度にこれをしたのだそうです。
95の歌は戦乱で都が荒れ…そんな激動の時代に詠まれた歌で
舞台は天台宗を開いた最澄がいた比叡山。
若い僧侶が開祖最澄の意志を継いで、民の救済をする事が使命と歌った
意味の深い歌になっています。

百人一首は約600年間の間に詠まれた歌が1から時代順になっているので
歌の内容でその時代を垣間見る事が出来たりするんですね。
素朴な歌が流行ったり、女性の活躍する時代があったり、
戦乱の不安定な時代に詠まれた歌もあったり…
そんな事にも注意して見てみると、また違った一面を垣間見る事が出来ます^^
考えてみると、こういうものがずっと残っているってすごい事なんですよね。
これから何百年も経ったら…今創られている色々なものたちが
そんな風に後の人たちにものを語る時がくるんでしょうか…
願わくば、その時代に流れる空気がとても穏やかなものでありますように…

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コメント 8

つるぎ

600年もなんですか~それは凄いですね!
そんなに長い年月掛かって出来たものなんですか~沢山の人が詠んでいますかねそう考えると価値のあるものなんだな、僕も覚えようかな(汗;;

by つるぎ (2010-12-19 09:59) 

風光

5・7・5・7・7の31文字に込められた心の言葉が、今の時代にも伝わってくるのは
時代は移り変わっても人の心は変わらないという証だと思うのです。
できればその歌の地に立ち風に吹かれてみたいです。
ひょっとすると、作者の声まで聴こえてくるかもしれませんね。。。
そんな思いにさせるのも、百人一首ならではと思います。


by 風光 (2010-12-19 17:20) 

悠人

衣を打って暖かく着る…生活の知恵ですね!

圧倒的に恋歌が多い中で、どちらもいい歌ですね。
しみじみと読みました。

年末まであとわずか…お互い体調に気をつけつつがんばりましょう!
by 悠人 (2010-12-19 23:30) 

宗流


こんばんは、海月さん♪
百人一首も残りもう僅かですね^^
お疲れさまでした~との思いがありつつも、
海月さんの百人一首の解説ファンだっただけに
同時に一抹の寂しさがあるんですよね~^^;

94の歌…私は仕事柄なのか、情景がとてもリアルに浮かびます。
衣打つ作業を、砧(きぬた)打ちと言うのですが、これは織物を織った後、
生地にしなやかさと独特の艶を与えるための、昔ながらの作業なんですね。
謡曲の中にも「砧」という曲があり、それは帰らぬ夫を砧を打ちながら待つ妻が、
主を思い、焦がれ死した後も妄執に苦しむという筋なのですが、砧の音は
どこかそうした物悲しさを誘うのも解るような気がします。

音というものは、生まれて耳に届くとしてもそれは僅かな一瞬なのでしょう。
けれど、その音が紡ぎ出す情景や、音を詠む歌というものは、ともすれば
永遠の命を得るものなのかもしれない、そんな風にも思います。
砧打ちの音も、いつかは時代の流れの中から消えてしまう音かもしれません。
でも、こうして誰かがその音に何らかの思いを載せて遺してくれる事で
また別の新たな命が吹き込まれる…のかもしれませんね^^
by 宗流 (2010-12-20 00:57) 

海月シド

★つるぎさん
詠まれた100首の時代は600年間ですが
その後定家が歌を選び小倉百人一首というものが出来てから現在に至るまで
およそ800年もの間、受け継がれてきた事になります。
すごい事ですよね。それだけ時代が変わっても何か伝わるものがあった
素晴らしい作品だったという事なんでしょうね。
全てを暗記するのは難しい事ですけれど、覚える価値はあるかもです^^
by 海月シド (2010-12-20 01:31) 

海月シド

★風光さん
本当にその通りだと思います。
大きく時代は変わり、色んな事が変わりましたが
根底にある不変の心が、こうした素晴らしい物を今まで伝えてきてくれたのだと感じます。
その時代の風に私も吹かれてみたいです^^
きっと驚く事が連発でしょうね…
遠い昔の事に新鮮さや斬新さを感じたりするのかもしれません^^
今の時代に決定的に足りない物が何なのか、きっと教えてくれる事でしょうね。

by 海月シド (2010-12-20 01:35) 

海月シド

★悠人さん
圧倒的に恋の歌が多い分、こういった歌はかえって目立つというか
目を引くものがある様な気がしますね^^
とても奥が深くて、そして心の奥底に訴えかけてくるような雰囲気を感じます。
昔では当たり前だった生活の様子が見えてきたり…とても興味深いものが多いです^^

本当に…あともう年末までわずかですね…^^;
元気に年を越せるように、お互いに気をつけて参りましょう〜!

by 海月シド (2010-12-20 01:38) 

海月シド

★宗流さん
こんばんは^^いつもありがとうございます!
長々と解説にお付き合いくださって、本当に感謝しています^^
そう言って頂けるとこれまでやって来た甲斐がありました♪
百人一首の解説は残り僅かとなりましたが、
また来年は違ったものを何かご紹介出来ればとも考えています…まだ未定なんですけれど^^;

砧打ちというのは宗流さんの世界でも身近な話題だったのですね^^
何というか…いつも思うのは、こういう違った分野の話でも
どこかで何かが繋がっている…って事なんですよね。
特に宗流さんのお仕事は昔からある伝統の着物の世界ですから
余計にそういった共通点があるのかもしれませんね。
小さな事ですけれど、そんな接点があったりすると何だか嬉しくなってしまう私です^^*
恥ずかしながら、私砧というものを知らなかったんです^^;
今回歌に出てきて調べているうちにどういうものかを知る事になりました。
東京の世田谷に砧という地名があるのですが、
昔、絹布や麻布の生産が盛んだった事から、この砧打ちが行われていて
地名もそこからの由来みたいです…繋がってますね、やっぱり^^

謡曲の中にもある砧打ちの音…もちろんその音色を聞いた事はないのですけれど
誰かを待ちながらひたすらに布を打っているその心情を思うと
何だかどこからか聞こえてくるような、そんな気持ちになったりしますね。
音って本当に一瞬の響きだけれど…人の心には永遠に刻まれる忘れられない響きなのかもしれませんね。
素敵なお話ありがとうございます〜^^

by 海月シド (2010-12-20 01:54) 

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